俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
 
「これは惚れ薬です」

あまりにも安直というか予想通りの言葉に、私は内心『ええーっ!?』と引きつった声をあげた。

まさか西暦も二千年を二十年も超えようかというこの時代に、惚れ薬などというオカルトなものが存在しようとは。スピリチュアル女子の私もさすがに懐疑心が抑えきれない。

けれど私が怪訝な顔をしようとも、シャーマン美鈴は怯まないどころか自信満々にその小瓶を差し出してきた。

「これを意中の人に飲ませるのです。そうすれば彼は間違いなくあなたの虜になるでしょう。効果は絶対です。万が一効かなかった場合には、薬代だけでなく今日の占い代も全額返金いたしましょう」

返金保証までつけられて、私の中に迷いが生じる。

いくらなんでも惚れ薬なんてありえないとは思うものの、ここまで自信満々に言われると信じたくなってしまうのが人の心というものだ。

「こ、これ、人体に悪影響とかないものなんですか?」

「大丈夫です。ローズリキュールをベースにセージやジャスミンなど催淫効果のあるものを加え、月光浴で月のパワーを閉じ込め、私がまじないをほどこしたものですから」

飲ませたとしても健康に害はなさそうだ。だったら冗談半分で試してみるのもアリかもしれない。

「お……おいくらですか?」

馬鹿馬鹿しいと思う気持ちと、もしかしたらと願う気持ちをごちゃ混ぜにしながら、私は汗の滲む手でバッグからお財布を取りだした。
 
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