俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
――翌日。
「梓希! あんた、ば……っ!」
他に人のいないリフレッシュスペースの隅っこで、和花ちゃんは私とピンクの小瓶を交互に見つめてから呆れたように叫ぼうとして口を噤んだ。心底呆れたけれど友人を『馬鹿』と罵るのは気が引けたのだろう、和花ちゃんは優しい。
その代わり眉間にしわを寄せ盛大なため息を吐きだしてから、和花ちゃんは「あのさぁ」と口を開きなおした。
「今、二十一世紀だよ? もう令和になったんだよ? わかってる? 惚れ薬なんて何百年前の遺物だっての。そんなものが本当に存在するならば、日本は少子化なんかになってないと思わない? 梓希がスピリチュアル好きなのは知ってるけど、もうちょっと科学的な視点っていうものを持とうよ」
冷静にお説教されて、途端に自分が阿呆に思えてくる。恋を成就させてイイ女になるはずが、なんだか逆行していっている気がするのはどうしてだろう。
「分かってるって! 私だって本気で信じてるわけじゃないよ。おまじないっていうか、ジョークっていうか……体に悪影響がないなら試してみてもいいかなーって思ったくらいで……」
「でもそれ、お金出して買ったんでしょ? いくら?」
「……三万円」
「ばっ……馬鹿ぁ!!」
結局こらえきれず私を罵った和花ちゃんは、顔を両手で覆い「ごめん。私が『恋人作れ』なんて発破かけたのがいけなかったんだ。本当にごめん」とついには自分を責めだした。