俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
 
「ちょ、ちょっと。和花ちゃんのせいじゃないし。それにほら、効かなかったら返金保証だってあるんだから、ね。ほら、今日ちょうど小宮山さん来てたし、さっそく試してみようかな」

自分の馬鹿っぷりがいたたまれなくなってきた私は、なんとか場の空気を変えようと思い、無邪気さを装った明るい声で言う。

「そうそう、説明書ついてるんだ。えーと、まず用意するのが惚れ薬とドリンクだって」

惚れ薬には小さな本型の説明書がついてきた。それに従い、私はすぐ近くの自動販売機で紙コップのアイスコーヒーを買った。

「それから次は……『方法はカンタン、相手の飲み物に惚れ薬を数滴混ぜるだけ! 相手がそれを飲んだときに目を合わせることがポイントよ!』……だって」

「説明軽すぎない!? ってか方法簡単すぎない!? そんなの三万円の商品につける説明書じゃなくない!?」

和花ちゃんのツッコミが適切すぎて、私も頭が痛くなってくる。絶対騙されたとものすごい後悔が押し寄せてくるけれど、それを認めるには三万円は大きすぎるので、私はへらりと力なく笑った。

「まあまあ。えーっとそれから……『飲ませた直後から効果はすぐに発揮されます! 特に相手の名を呼んであげると、相手のラブ度がアップしちゃうかも』だってさ」

名前を呼ぶたびに想いが強くなるなんてロマンチックじゃない、と、私は無理やりポジティブに考えながらコーヒーに惚れ薬を二、三滴垂らす。

かすかにローズの香りが鼻をかすめたけれど、数滴だったのですぐにコーヒーの香りに混ざって消えた。
 
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