俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
「悪い、勝手に飲んじゃって。ちょっと悪ふざけが過ぎた。お詫びに何か奢るよ。何がいい?」
実に周防さんらしくないしおらしい物言いに、私は心の中で『ギャーー!!』と絶叫をあげた。確定だ。間違いない。あの惚れ薬は――本物だった。
私に対してこんなに丁寧で優しい周防さんは初めてだ。その強烈な違和感と、薬が効いてしまったという二重のショックで、私の顔はどんどんと青ざめていく。
「だ、だ、大丈夫です……。お、お、お気になさらず……」
震える声でそう告げ、ギクシャクとした動きでその場から離れようとした。すると。
「ちょっと待って。顔色がよくないぞ。少し座って休んだほうがいい」
なんと肩を抱かれ、優しく椅子に座らされてしまった。
さらに彼は自動販売機で手早くアイスティーを買うとそれを私に手渡し、「忙しいだろうけど無理するなよ。あんまり具合悪いようなら俺に連絡しな。家まで送っていってやるから」などと言って軽く私の頭を撫でてから去っていった。
再びリフレッシュスペースに沈黙が流れ、しばらくしてから私は和花ちゃんと顔を見合わせガタガタと震えだす。
「あああああ……どうしよう和花ちゃん……薬効いちゃった……」
「お、お、落ち着いて、梓希。き、き、きっと何かの間違いだから」
「優しい周防さん怖いよう……あんなの周防さんじゃない……」
もはや冷静ではいられない。私は真昼の悪夢を見ているような気分で震え続け、その日は仕事がろくすっぽ手につかないほどだった。