俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
 
その日の夜。私はキリのいいところで仕事を切り上げ急いで会社を出ると、一目散に『シャーマン美鈴の占いの館』へ向かった。

もう彼女に土下座でも何でもして、惚れ薬の効果を解いてもらうしかない。私と周防さんの人生にかかわってくるのだ。

一刻も早くなんとかしてもらいたくて、私は駅に着くと占いの館があるビルまで走っていった。ところが。

「……うそ……」

地下の階段を降りて、私は衝撃のあまり手に持っていたバッグをその場に落とした。

占いの館があった場所にはシャッターが降ろされ、『空き店舗』と書かれた紙が貼ってある。

「うそでしょ!? ちょっと! シャーマンさん! 美鈴さーん!」

信じられなくて、私はすがるような思いでシャッターを叩き大声で呼びかけた。すると物音に気づいたのか一階の店舗の人がやって来て、迷惑そうに顔をしかめて話しかけてきた。

「そこ夜逃げだよ。昨日から客やら借金取りやらが押しかけてるけどもぬけの殻なんだ。だから騒がないでくれる? うるさくて上の階まで響くんだよね」

「す、すみませんでした……」

謝って頭を下げながら、私は愕然とする。

(夜逃げ? どういうこと? じゃあ、惚れ薬の効果を解いてくれる人は……いないの?)

打つ手がなくなり、目の前が真っ暗になった。他力本願で惚れ薬なんかに頼ろうとした自分を猛省する。

「ごめんなさい、神様ぁ! だから時間を巻き戻してー!」

あまりにも絶望的なこの状況に、私は自分が大人だということも忘れオイオイ泣いてしまった。

一階の店舗の人は痛々しい視線を送りながら去っていき、私は薄暗い地下のシャッターの前でひとり、打ちひしがれていた。
 
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