俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
(だ……駄目! それだけは駄目!)
私は顔を青くしながら立ち上がり、慌てて周防さんの手を取った。
「い、行きます! ぜひ一緒に行きましょう!」
いくら苦手な周防さんだからって、彼の命を脅かすなんてことは絶対あっては駄目だ。彼は本当に意地悪だけど、仕事は優秀だし頼りになるしこの会社にいなくちゃならない人なんだから。それにもしいなくなったら、私だって寂しい。
それ以前に、惚れ薬なんて私の馬鹿な買い物のせいで他人が害を被ることが、あってはならないことなんだけれども。
ガッチリ両手を掴んでお誘いを快諾すると、周防さんの苦しそうだった顔がスッと柔らかな笑顔に変わった。
「そっか! 喜んでくれてよかった」
その嬉しそうな笑顔に今度はこちらの胸がズキンと疼く。
周防さん……本当に私のこと好きになっちゃったんだな。彼の幸福も命も私次第になってしまったのだと痛感して、申し訳なさに逃げ出したくなる。
「仕事、夜の八時くらいまでには終わらせられるか? 俺も夕方からは社内にいる予定だから、終わったら連絡してくれ」
そう言って周防さんはさらににっこり微笑むと、「頑張れよ」と私の頭を軽く撫でてから踵を返して去っていった。
その背を見つめながら椅子に座り直し、私はため息をひとつ吐く。
手もとの液晶タブレットにあてもなく「ごめんなさい」と書き、消して、深く項垂れた。