俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
 
作業を引き受けると決めたのは自分だし、そもそもあれは三坂さんに頼まれたのであって周防さんが自分を責める必要はない。それに体調が悪いのに無理をしていたのも自己責任なんだから、周防さんが申し訳なく思う必要なんか全然ないのに。

そう伝えようとして開きかけた口は、周防さんの人差し指で止められてしまった。

「また咳き込むぞ。おしゃべりはあとでな」

それもそうだと思い口を噤むと、周防さんは指を離し少しだけ表情をやわらげた。

「会社には俺から伝えておく。早退扱いでいいよな。それから、ゼリーとかヨーグルトとかは冷蔵庫に、スポドリと薬はここのナイトテーブルに置いとくから。あとレトルトのお粥もキッチンにある。帰ったらちゃんとしたもん作ってやるから、悪いけど今はそれ食っててくれ」

「はい……っていうか、あの」

「そばにいてやりたいけど、まだ打ち合わせが二件残ってるんだ。終わったらすぐ戻るから、おとなしくしておけよ」

どうやらここへ運ばれてからまだあまり時間は経っていないらしい。窓の外も明るいし、おそらく一時間も経っていないのではないかと思われた。

「私、このままここにいていいんですか?」と尋ねたかったけれど、周防さんは立ち上がると私の頭を軽く撫でてから部屋を出ていってしまう。

そして忙しなさそうにジャケットを着ながら戻ってきて、「タオルもここ置いとく。足りなかったら脱衣所漁ってくれ」と言ってタオルの束をナイトテーブルに置いていった。

「じゃあいってくる。水分摂れよ」

そう言い残し、周防さんはあっという間に玄関を出ていった。

ドアの外から聞こえる施錠の音を聞きながら、ひとり残された私はしばらくぼんやりとしながら考える。
 
< 67 / 224 >

この作品をシェア

pagetop