俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
 
「遅かったですね、飲みにいってたんですか?」

「んー。演出家の橋本さん来ててさ、俺あの人に世話になってるから誘われたら断れねえんだよ」

周防さんはそう話しながら靴を脱いだけれど、玄関にあがるなり廊下に座り込んでしまった。

「大丈夫ですか? お水持ってきます?」

「いや、いい。それより立たせてくれ」

お酒には結構強い周防さんが、珍しく深酔いしているみたいだ。営業は飲むのも仕事のうちなんて言われるけど、大変だなあと感じざるを得ない。

すっかり脱力している周防さんに肩を貸そうと、しゃがんで彼の腕を取ろうとしたときだった。

「え……っ」

まるで罠のように周防さんは近づいた私を抱き込み、ギュウっと腕の中に閉じ込めてしまった。

外から帰ってきたばかりのヒンヤリとしたコートの感触、お酒と煙草とフゼアのラストノートが混じった大人の男性の香り。そのふたつに包まれて、私の胸が痛いほど高鳴る。

「す……周防、さ……」

「お前、もしかして俺が帰るの待っててくれたのか?」

「え? いえ、っていうか、あの……」

「それとも俺がいなくて寂しくて眠れなかった?」
 
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