俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
「梓希」
首筋にキスしたり甘噛みしたりしながら、周防さんの右手がパジャマの上から私の胸に触れる。
ますます緊張が募って声も出せなくなった私は、小さく震えながら目を固く閉じることしかできない。
心臓が壊れそうなくらいドキドキしている。顔が熱い。顔だけじゃない、体の奥も熱くてなんだかすごく変な気分だ。吐息を聞かれるのすら恥ずかしい気がして、唇をギュッと噛みしめた。
(熱い……周防さんの唇も手もすごく熱い……違う、触れられたとこが熱くなってるの? なんかもうよく分かんない……)
早鐘を打つ鼓動に翻弄されたまま震えてひたすら固まっていると、私を抱きしめていた腕がパッと緩んだ。
おそるおそる目を開けてみると周防さんはものすごく照れたような困ったような顔をしていて、「冗談だよ。ごめんな」と私の頭を軽く撫でてから自力で立ち上がった。
「シャワー浴びて少し寝るわ。お前もあったかくして寝とけ」
そう言って少し足取りがおぼつかないながらもお風呂場へ行ってしまった彼のうしろ姿を見ながら、私は廊下に座り込んだまま立てないでいた。
(びっくりした……)
まだ手が小さく震えている。ふーっと大きく息を吐きだすとようやく少し気持ちが落ち着いたけれど、代わりに今度は力が抜けてしまって立つ気力がなくなってしまった。
(冗談……って言ってた。からかわれただけなのかな)
――『よーっぽどまじめで相手を大切に思ってるか、あるいは性的な関心が湧かないか』
ふと、和花ちゃんの言っていた台詞が頭によぎって、何故だか胸がきゅうっと絞めつけられた。
ひんやりと冷えた玄関の廊下にはまだ周防さんと冬の空気のにおいが残っていて、私はぼんやりと天井を見上げながら自分の両腕を軽くさすった。