俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
翌朝……とはいっても周防さんが帰ってきてからわずか三時間後。
「おはよう。今日の朝メシ何?」
キッチンでサラダを作っていた私に、寝室から出てきた周防さんはいたって変わらぬ様子で話しかけてきた。
「おはようございます。えっと、今日は……今日もパンとサラダとハムと卵です。毎日代わり映えのしないメニューですみません……」
「全然。俺はお前の作る朝メシ好きだよ」
そう言ってカウンターに差し出したコーヒーを受け取り、周防さんはダイニングの椅子に座ってタブレットでニュースを見始めた。
いつもと同じ朝の光景なのに、コーヒーカップを持つ武骨な手に、ニュースを読む伏し目の睫毛の長さに、カップに口づける唇に、私はなんだかドキドキしてしまう。
(さっきあんなことがあったのに、周防さんは全然普通だな……私ひとりだけ意識してて、なんか馬鹿みたい)
涼しい顔をしてコーヒーを飲んでいる周防さんを見ていると、あれから一睡もできなかった自分が間抜けに思えてきた。
さっきのは酔った勢いの悪戯で、もしかしたら彼は覚えてすらいないかもしれない。
切ったトマトを器に盛りつけながら、私は心の中で語りかける。「和花ちゃん、やっぱり周防さんは私に性的な魅力なんか感じてないみたいだよ」、と。
それは正しくないこの恋に於いて、私の貞操が保証される非常によいことのはずなのに。
ガラスの器を持つ自分のふっくらとした手が、今日はやけに醜く見えた。