俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
翌週の土曜日。
例のアーティストイベントの後、私は近くのカフェで小宮山さんと話をしていた。
一度は断ろうと思っていた彼の相談を結局聞くことにしたのは、ふたりきりではなかったからだ。
「こちら、由良さん。最近僕のアシスタントをしてもらってるんだ」
そう言って紹介されたのは、まだ大学生だという年若い女の子だった。
「はじめまして、由良です。三ヶ月前から小宮山先生のもとでカメラを教わっています」
「ご丁寧にどうも。椛田です。しののめ広告でデザイナーをしています」
由良さんと無難なあいさつを交わしながら、私は安堵と疑問の入り混じった気持ちを抱いていた。
和花ちゃんの予想が外れ、デートの口実ではなく純粋な相談らしいのはよかったけれど、だとすると私なんかにいったい何を相談するのだろう?
私なんか小宮山さんに比べたら仕事の経験も横の繋がりも圧倒的に少ない。私が彼の力になってあげられることなんてあるのか疑問だった。
「今日はふたりきりより女の子に同席してもらった方がいいと思ってね」
向かいの席に座った小宮山さんは、いつものように穏やかな笑顔でニコニコと言う。
(女の子が同席した方がいい? いったいなんの話だろ)
ますます相談事の見当がつかなくなった私は曖昧な笑みを返してから、運ばれてきた抹茶ラテをひと口飲んだ。