転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ ~次期皇帝と婚約なんて聞いてません!~
 ヴィオラ・アドルナートがこの世に生を受けたのは十二年前。

 だが、ヴィオラにはその前に十八年間の記憶がある。日本人として暮らしていた記憶だ。

 両親が経営する洋食屋兼カフェの『アンジェリカ』は、近所の人達の憩いの場であり、いつもたくさんの人が集まっていた。

 前世のヴィオラは、いつかあとを継いで店に立つのだと決めていた。大学への進学を決めたのも、いずれ役立つ勉強がしたかったから。

 大学と並行して、調理師になるための専門学校にも通うつもりで、そのための学費もアルバイトをして貯めていた。

 前途洋洋だったはずなのに――気がついた時には、ヴィオラ・アドルナートとして生まれ変わっていた。

 しかも、前世の記憶が戻ったのは、人質としてオストヴァルト帝国に向けて出発するまさにその当日のこと。

 家族に可愛がられて育った"咲綾"に対し、"ヴィオラ"は母亡きあと、周囲の家臣達に軽んじられながら生活していた。

 継母に命を狙われるようなこともありながらも、"ヴィオラ"がなんとかねじ曲がらずに育つことができたのは、ニイファが側にいてくれたからだ。

(別に、前世に戻りたいとか……そういうわけじゃないけど。でも、ミナホ国の人には会ってみたい)

 隣にいるニイファが、気づかわしげな表情を向けているのにも気づかず、ヴィオラは自分の思考に沈み込む。
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