転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ ~次期皇帝と婚約なんて聞いてません!~
 新月宮を出たところで、セドリックはリヒャルトの方を振り返った。

「俺を信じてくれたことには感謝する。でも、俺はあなたが大嫌いだ、兄上」

「……そうだろうな」

 どうしたものかわからず、ヴィオラはおたおたとしてしまう。これは、大人同士の会話であって、ヴィオラは聞くべきじゃない気がする。

 リヒャルトもすぐにその結論に至ったようだった。

「ヴィオラ、戻るぞ」

「は、はい!」

 けれど、身を翻したリヒャルトに続こうとしたヴィオラの腕を、セドリックが掴んで引き留めた。

「――君は、魔法使いなのかな。イローウェンの小さな姫」

「ま、魔法使い……?」

 セドリックの思考回路はヴィオラには理解できない。なぜ、ヴィオラが魔法使いなんて発想になるのだろう。

「君が来たことで、皇妃陛下は自分の存在意義を見出し、兄上も、以前とはまったく違った姿勢を見せるようになった。君が魔法をかけたんじゃないのか」

「それは、違うと思います、セドリック様。私が魔法をかけたんじゃなくて、おいしい料理が魔法をかけたんですよ」

 ヴィオラは何一つ特別なことをしていない。せいぜい、皇妃のためにお菓子を焼いたり料理を差し入れたりしたくらいだ。

「皆で囲む食卓って、すごくおいしく感じられるんですよ。セドリック様は、そうじゃないんですか?」

 真顔で問いかけると、セドリックは真面目に考え込む顔になった。
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