転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ ~次期皇帝と婚約なんて聞いてません!~
「タケル。レディはそんなに食べないんだよ。ぶくぶく太ったら話にならないだろうが」

「いてぇな!」

 テーブル越しにヤエコがタケルの頭をこつんと叩き、タケルは頭を抱える。

「悪いね、こっちじゃ十五で成人なのに、こいつはいつまでも落ち着きがなくて」

「成人しても、落ち着きのない子供も多いわ。タケルも、もう少ししたら落ち着くでしょう」

「あんたの息子、リヒャルトだっけ? 今度は会えるといいな」

「近いうちに招待してくださるのでしょう? その時に会えると思うわ。あなた達がこの国にいる間は、しばしば会いましょう。あの頃の話をできる人は、もういないから」

 そう言った皇妃の視線が、一瞬だけ揺らぐ。皇妃の母国は、戦に負けて今は存在しない。他国に嫁いだために生き残った親族がいるらしいが、遠く離れているので、こんな風に話をすることはできないのだ。

 ヤエコは、皇妃の腕に手を置いた。

「国が滅んでも、変わらないものもある。新しい何かを作り出すこともできる――そうだろう? ミナホ国とオストヴァルト帝国の間に、新しい絆が生まれるように」

 そんな話をしている間も、タイシンは口を開くことなくじっと立っていた。
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