転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ ~次期皇帝と婚約なんて聞いてません!~
 ヤエコはあきれた様子でタケルの頭を軽くたたき、「イテ」とタケルは頭を抱える。皇帝の前だというのに、あまり気にしていない様子だ。

 皇帝は――とちらりと目をやれば、別に気にした様子もなく、皇妃に何事かささやきかけている。

(皇帝陛下と皇妃様、前より仲良くなった……の、かな?)

 皇妃はにこやかに微笑んで、皇帝の腕に手を置いた。以前、皇帝のことを冷たいと評したこともある皇妃だけれど、皇帝に対する見方が変わったのだろうか。

 ヤエコが先導し、隣の部屋へと場所を変える。隣の部屋は、オストヴァルト帝国の家具が置かれていて、ヴィオラだけではなく他の人達にもなじんだ雰囲気であった。

 脚部から幕板にかけて、細かな彫刻の施されたオーク材のテーブル。その周囲には、花模様を織り込んだ黄色い布張りの椅子が並べられている。

 壁際に飾られているのは鎧や刀。こちらの大陸で昔使われていたものとは形が違い、やはり和風に見える。

 それから、壁にかけられている絵も、ミナホ王国のもののようだった。

(……富士山?)

 青々とした山の頂上には雪。そして、そこにかかる満月の絵だ。

 日本とミナホ国は違うはずなのに、いや、違うとわかっているのに、それでも壁にかけられた絵は、ヴィオラの郷愁を限りなく刺激してくる。

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