すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「今のお前に理由は必要ない。ただ俺の言うことを聞いていればいい、分かったか?」

威圧的な物言いに、今度こそ言葉が出なくなり俯く。

重い空気が漂う中、大きな溜め息をついた智大が無言で立ち上がり玄関に向かう。
買い物に行くのだと察したが藍里は特に何も言わず、顔も上げずに智大が出ていく玄関のドアの音を静かに聞いていた。

鍵がかかる音が聞こえて藍里はゆっくり顔を上げるとそのまま天井を見つめ、いつの間にか止めていた息を静かに吐いた。

「……もう、いいよね……」

たくさん我慢したと思うし、勇気を出して歩み寄ろうともしたつもりだ。
それなのにこんなことになるし、緊急事態だと家に監禁のようにされている理由も教えてもらえない。

自由になりたいーー。

そう強く思った瞬間、藍里は勢い良く立ち上がっていつも使っているバッグを手に取った。
中に財布と発作がおきた時の薬が入っているのを確認するとそのまま玄関に向かい靴を履き、扉に手を伸ばそうとして止めた。

「絶対怒られる、よね……でも……」

藍里の中に迷いが生じ、どうしようかと悩む。
緊急事態だと言った先輩と圭介の言葉が気にかかるが……。

ーーただ俺の言うことを聞いていればいい、分かったか?

先程言われた智大の言葉を思い出して、強く唇を噛む。

納得なんて出来ないから、たまには自分の思うように動いてもいいんじゃないか……。
少し気分転換に家を出るだけ、すぐに帰れば大丈夫だと自分に言い聞かせて藍里は思いきって玄関の扉を開けた。

「うわ……マジか……」

話が違うじゃないですか、先輩っ!と藍里からは気付かれない場所で、藍里が家から飛び出したのを隠れて見ていた人物は慌ててスマホを取り出したのだった。
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