すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「不思議……まるで海の中にいるみたい……」

「デジタルアートって言うらしい。ここも先輩と入江に藍里が絶対気に入るって勧められた場所の一つだ」

触れられないと分かりつつも、漂う泡にそっと指先を伸ばす。
ゆらゆらと揺れる波紋に本当に海中にいるように錯覚してしまいそうになり、藍里は何度か瞬きをした。

「前に桜を見に行った時はイルミネーション見れなかったからな……」

「だから連れてきてくれたの?」

「それもある。でも、今日この日は必ずここに来ようと前から決めてた」

「前から?この日に……?」

「……そろそろ次に行くか」

「あ、うん……」

会話を無理に終わらせた智大は藍里が頷いたのを確認するとゆっくりと歩きだした。

智大の腕に抱きついたままの藍里もゆっくり歩きながら、智大が家を出る前にも言っていた“今日は”という言葉が気になっていた。

ーー今日、何かあったっけ……?

特別な日でも何でもない、普通の日だったはず。
それとも藍里が忘れているだけで何かの記念日だっただろうかと考えるが、やはり何も思い出せない。

チラッと智大を見上げると、緊張してると言っていただけあっていつもより少し表情が固い気がする。
初めて見る表情のはずなのに、いつかどこかで見たような、そんな既視感を覚えた。
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