すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「待ち遠しいのは分かるが、今からそんなに落ち着きがなくてどうするんだ」

「だって……」

いつ陣痛が来るのか、その時に智大はいるのか、いなければ一人で病院まで無事にいけるのかと色々と考えてしまうことは多い。
勿論、赤ちゃんにやっと会えるという楽しみの方が大きいが、どちらにしろ気が気でないのは確かだった。

「出来るだけ傍にいれるようにするから、何かあったらすぐに言え。何があっても駆けつける」

「……うん……」

智大の力強い言葉は不思議と藍里の勇気となって、少しだけ落ち着いた藍里は頷くとぎゅっと智大に抱きついた。
やっぱりお腹が邪魔して上手くくっつけないけれど、それももう少しなのだと思うと少しだけ寂しくも感じた。

「今度どこかに出掛けるか?二人でゆっくり出掛けるのは当分お預けになるだろうからな」

「あ……じゃあ、あの公園がいい。リスのふれあい広場のある公園」

「……もっと遠いところでもいいんだぞ?」

「ううん、あそこがいいの」

良いことも悪いことも色々とあった思い出深いお気に入りの公園でのんびりと過ごし、そして赤ちゃんが生まれたら次は三人でまたあの公園に行きたい。
藍里が穏やかな表情でそう言うと、智大は少し考えてから、分かった。と頷いた。

「帰りは何か美味い物でも食べて、出産に向けての鋭気を養うか」

「うん!すごく楽しみ!」

これが智大と二人きりでゆっくり出掛けられる最後のデートになるかもしれないと思いながら、藍里はワクワクする気持ちを押さえることが出来なかった。
その日の夜、やはりそわそわして寝付けずにいた藍里は、遠足前の子供か。と智大に笑われてしまった。
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