生簀の恋は青い空を知っているか。

「会長、そんなに見たら松葉に穴が空きます」

営業トークの声色。朗らかに笑う浅黄さんに胡散臭さを感じながらも、安堵する自分がいた。

「貴方の得意料理は何ですか」

静かに尋ねられた。
ほかでもないわたしに。

「と、得意料理ですか……」

普段、自分の為にしか料理をしないわたしの得意料理ってなんだろう。
考えてしまう。

「ありませんか?」
「あんまり、料理をしないもので……」
「じゃあ貴方は、愛を誓った相手に何をできるんですか?」

ずどん、と心にきた一言だった。

ひくりと笑顔を作っていた頬が痙攣する。

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