生簀の恋は青い空を知っているか。

グローブボックスを開いて、浅黄さんがティッシュケースを出してくれた。

「浅黄さんの車にもティッシュあるんですね」
「あると便利だろ」
「浅黄さんにも庶民的な一面があるんですね」
「泣き止んでから笑えよ」

ティッシュで無理やり、わたしの顔が拭われた。
い、痛い。

痛さにまた涙も出て、浅黄さんに呆れられる。

「どうしたんだよ、いきなり」

グローブボックスを閉じて、浅黄さんはシートに戻ってこちらを見た。

「……自分がダメなことは知ってたけど、改めでダメさが分かってしまって」
「暗いな」

即答された。

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