生簀の恋は青い空を知っているか。
いつしか他人のいる場所では眠れなくなって。
今、ここに逃げてきたのかもしれない。
きっと俺のことを知らないなら、今日初めてパーティーに参加した鼎の知り合いなのかもしれない。この業界に長くはいない人間なんだろう。
「生け簀の鯉は、ただじっと死ぬのを待つだけですけど、普通の鯉は鰭と鰓で好きな場所に行けるじゃないですか」
愛想笑いもしない。
「逃げる場所があるだけ、マシってことですよ」
何かに怒っている。
「君、酔ってるよな」
「はあ?」
「怒り上戸になるのか?」
「あなたの煙を吸うのが嫌で、怒ってただけです」