Hate or Love?愛と嘘とにまみれた世界の片隅で
「ナオ…っ」


もう一度抱きしめてほしい。


温もりを感じたい。


ナオの体温を感じたい。


「…俺、どうしても玲香がアイツに抱かれてたことを許せない。でも…玲香のことは好きだよ。ずっと一緒にいたかった」


ナオ…。


「命を懸けて玲香を守りたいって昔から言ってただろ?それを全うできて良かった」


……っ。


「…そんなの全然良くないよ…っ。ナオは生きなきゃ…っ。あたしと一緒に生きようよ…!じゃなきゃあたし、生きていけないよ…」


「そんなことない。玲香は強い。俺がいなくても大丈夫だよ」


強くなんかない…。


ホントはどうしようもなく弱くて、すぐに泣きたくなって、誰かが恋しくなる。


ナオはそんなあたしを知ってるはずじゃん…っ。


「じゃあな、玲香。俺の分までしっかり生きろ。すぐ俺のところ来たら怒るからな?」


最後までナオに触れられなかった。


「待ってナオ…っ」


ナオがどんどん消えていく。


真っ暗闇に戻っていく。


「愛してる」


その言葉と共にナオは消えた。


真っ暗な闇へと姿を消した。


「ナオ…っっ」


あたしの悲痛な叫びは誰にも届かなかった。
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