予言書を手に入れた悪役令嬢は役を降りることにしました。
ミリアはひっそりと息を吐いてラーナの手を握り返す。

「ごめんなさい。心配をかけて。少しパーティーの空気に酔ってしまったみたいで、外の空気を吸いに出てそのまま散歩してたの。そうしたら礼拝堂を見つけて……、つい冒険心とでも言うのかしらね?中を覗いてみたくなって」
ーーー無断で入り込んだ挙げ句腐った床を踏み抜いて床下に落ちてしまったの。

そう言って視線を伏せたミリアに、ラーナは大袈裟な素振りで「そんなの気にしないで」と微笑みかけてくる。

「でもせっかくのあなたの誕生日パーティーだったのに、私のせいで台無しになったのではなくて?」

そう思ってたのでしょう?と胸の中でだけ続けたミリアの手から柔らかな手の感触が離れていく。と思うと、伸びてきたラーナの腕に引き寄せられ、ミリアの頭はラーナの豊満な胸元に沈んでいた。

「いいのよそんなの。ミリアがいないって騒ぎになったのはパーティーも終盤になってからのことで、お客様は半分ほどお帰りになった後だったの。だからパーティーは大丈夫。それより一人であんな場所に閉じ込められて、怖かったのでしょう?恐ろしさに泣きはらして気を失ってしまったのよね?……可哀想なミリア」

恐ろしかったのは事実だけど泣きはらしたのはそれだけが原因じゃない。
気絶したのだって……。

ちら、と傍らでプカプカ浮かぶ幽霊に目をやると彼女は何故か両腕を痒そうにさすさすしながら「何この女っ!キモッ」と少々淑女らしからぬ叫び声を上げていた。



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