予言書を手に入れた悪役令嬢は役を降りることにしました。
「ええ、そうよ。あなたが早く目を覚ましてくれますようにってお祈りしながら手を握っていたの」

ミリアの内心も知らずに、ラーナは手を伸ばすとそっとミリアの手を握った。
令嬢らしい爪の先まで手入れのされたしっとりと柔らかな手。
左手の薬指には小ぶりのエメラルドの指輪がきらめいている。

(……違う)

眠りの中で感じていた手はもっとずっとヒンヤリと冷たかった。

ミリアがそう思いながら握られた手を見つめていると、少し離れた場所から「ふん」というせせら笑いが聞こえた。

「よく言うわっ!ぜんっぜん手なんか握ってなかったわよ!!この女嘘つきよ!大嘘つき。この部屋に来たのだってあなたが運ばれてきた時に一度来たきりでその時だって『せっかくの誕生日パーティーが台無しだわ』とかふてくされてたわよ?」

そうなのか。

きっとつい数時間ーーーいや、気絶していた時間を考えると十数時間ほどになるのだろうか?前までのミリアなら信じなかっただろう。

出会ったばかりの幽霊と、ミリアならラーナを信じていたはず。
そのような嘘を言ってラーナを貶めるつもりかと腹を立てさえしたかも知れない。

でも今となっては。

(きっと真実なんだわ)
 
そう、諦めにも似た気持ちとともに思った。

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