予言書を手に入れた悪役令嬢は役を降りることにしました。
「どんだけ芝居がかってんのよっ。いちいち仕草も台詞も大仰だし。女優にでもなったつもりかっつーっの!しかも大根だわっ!とんだ大根役者よっ」

あなたも結構……、と思ってしまったのは内緒だ。うん、絶対言わないでおこう。
それにしても本当にラーナには何も見えていないし聞こえていないらしい。
でなければすぐ傍らでビシッとばかりに自分に指を指して騒ぎ立てる幽霊になんの反応も返さないはずがない。

「いいこと?この女の言うことは信用しない方がいいわ。だって絶対性格悪いもの。もう腹ん中真っ黒よ、真っ黒!」
ーーーまあ、貴族の令嬢らしいっちゃらしいけど?私も他人のことは言えないし。 

幽霊のその物言いに、ミリアはラーナの胸の中で笑ってしまいそうになって、息を止めて我慢をした。が、わずかに肩が震えてしまう。

「ミリア?」
「ご、ごめんなさい。少し苦しいわ」

どうかしたのか、と顔を覗いてくるラーナに、ミリアは慌てて適当に言葉を繋ぐ。

「ラーナ、ありがとう。私、本当にもう大丈夫よ?お医者様もいらないと思う。でもできればもう少しだけ休ませてもらってもいいかしら?」

小首を傾げて言うと、もちろんよ。とラーナは離れていく。

「隣室に侍女を控えさせているから、何かあったらすぐに呼んでね?」

またミリアの手をそっと握ってからドアの方に去っていくラーナの背に、幽霊の女優が「ベェ」と舌を出している。

その仕草にミリアもまた肩を震わせつつ、出て行くラーナを見送った。

 

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