予言書を手に入れた悪役令嬢は役を降りることにしました。
ミリアは絶句して幽霊のお腹を凝視する。

(ぺったんこ。どうみてもぺったんこだわ)

ミリアは兄嫁の産後の姿を見たことがある。悪阻が収まったあたりからどうにも腹が減るらしく、しかも周りからも二人分なのだからと進められることもあり……お腹だけでなく二の腕やら頬やら顎やらもぷっくら膨らんでいたものだが。

(あれ?でもまだ母乳が出る時期って……)

幽霊の女性の胸が出産で一時的により大きくなっているのならば……。

彼女は、子供を産んですぐーーー少なくとも数ヶ月の内に命を落としたということになるのではないか。

「そんな……」

ミリアは胸がぎゅ、と苦しくなって俯く。

それでは生まれてきた子供は、物心がつくよりも先に、母親をなくしていることになる。
それもーーー。

(あの傷……)

あの礼拝堂の床下で見た時の、あの傷は。

(誰かに切られた、傷、よね?)

明らかな、刃物による切り傷。
彼女は子供を産んですぐ、何者かによって殺されたのだ。

「あなたはいったい……」











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