144本のバラの花束を君に
照れ屋なエリックが一緒に写真に写ってくれたり、手をつないだり、少し甘い言葉を言ってくれたりする。そんなこと、外では今まで一度もなかった。静音の中で不思議な気持ちはどんどん大きくなっていく。

そして、夕方。アレクサンドラ・パレスを観光し終えた後、エリックは「ちょっとトイレに行ってくる」と言って静音に背を向けた。

「気をつけてね」

静音はそう声をかけ、エリックが戻ってくるまでの間、辺りの景色を楽しむことにした。ロンドンなんて、滅多に来られない。アレクサンドラ・パレスは、静音が初めて来た場所だ。

静音が景色を目に焼き付けていると、「ねえねえ、君って日本人?」と声をかけられる。振り向くと、ラフな格好をした男性二人組がいた。

「はい、そうですけど……」

静音がそう言うと、男性二人は静音に近づき腕に触れる。急に触られたことで、静音は二人に対して嫌悪感を抱いた。

「観光客でしょ?俺らロンドンっ子!地元民!案内してあげるよ〜」
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