144本のバラの花束を君に
静音の隣でエリックが言う。

二人は三十分ほど、ビックベンを眺め続けた。

次に二人がやって来たのは、カムデンマーケット。ロンドンっ子からも観光客からも人気のマーケットだ。静音はここに来るのは初めてで、数え切れないほどのショップにあちこちに目を向ける。ショップだけでなく、人も多い。

エリックはどんどん歩いていく。はぐれてしまうと感じた静音は、「待って!」とエリックの服を掴んだ。

エリックが顔を赤くしながら静音の方を見る。静音はエリックが照れ屋なことを思い出し、「I'm sorry(ごめんなさい)」と言って服から手を離した。

「服、伸びるだろ」

そう呟き、真っ赤な顔のままエリックは静音の小さな手をつなぐ。いつも手をつなぐのは静音からだったので、エリックの行動に静音は驚いた。

「えっ……」

「ほら、あっちにお前の好きそうな店があるから……」

エリックはそう言い、静音と手をつないだまま歩き出す。エリックの方から手をつながれた、それだけで静音は嬉しさを感じる。世界が、少し特別に見えた。
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