クールな専務は凄腕パティシエールを陥落する
「殿、ご用命を」

愛菓の侍口調に苦笑した樫原は、

「まずは、その他人行儀な呼び方を変えていただけますか?名前で呼んで頂けると光栄ですが・・・」

「承知致しました。和生殿でよろしいか?」

「殿も敬語も不要です」

「承知いたした。和生と呼ばせて頂くことにする」

゛どこの新撰組だ゛

和生は内心突っ込みを入れたが口には出さずに終わった。

゛本当に興味深い女゛

愛菓は、冷蔵庫を開けると、牛乳と生クリームを取り出した。

初見のはずなのに、バニラエッセンスやグラニュー糖の位置も難なく把握したようだ。

材料を混ぜ合わせ、愛菓は嬉しそうに何かを作っている。

「フライパン?ですか」

「まあ、見てな」

゛今度は高校生のヤンキーかよ゛

突っ込みきれない和生の前で、あっという間に愛菓はプリンを作り上げていた。

「和生は甘いのが苦手。これならいけるかな?」

愛菓が差し出したのは抹茶のプリン。

恐る恐る和生がそれを口にすると、適度な甘さと口どけ豊かな抹茶プリンの風味が広がって消えていった。

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