クールな専務は凄腕パティシエールを陥落する
しかし、和生の感情を揺さぶる出来事は、突如、2か月前に起こった。
オークフィールドホテルの30周年記念イベントとして開催することになった、世界スイーツフェスティバルの最終日。
会場内をラウンドしていた和生は、突如眩暈に襲われた。
目の前が真っ暗になり、壁に寄りかかること数十秒。
幸い、お菓子に夢中の来場者も、忙がしく動き回るスタッフも和生の異変に気づいていない。
Mr.coolと呼ばれる完璧な専務が体調管理もできないと噂されては立場がない。
和生は誰にも気づかれないように、平然と呼吸を整えていた、はずだった。
「これ、どうぞ」
俯いていた和生の前に立ったのは、白いワークキャップにブラックのコックコートとパンツの愛菓だった。
彼女が差し出したのは、丸椅子とミネラルウォーター。
「いえ、私は仕事中ですので」
キッパリと断る和生を、愛菓は無理やり丸椅子に座らせて顔を寄せると
「大丈夫、私が上手く誤魔化すので任せてください」
と耳元で囁いた。
耳にかかる吐息が温かくて、ゾクッとした。
オークフィールドホテルの30周年記念イベントとして開催することになった、世界スイーツフェスティバルの最終日。
会場内をラウンドしていた和生は、突如眩暈に襲われた。
目の前が真っ暗になり、壁に寄りかかること数十秒。
幸い、お菓子に夢中の来場者も、忙がしく動き回るスタッフも和生の異変に気づいていない。
Mr.coolと呼ばれる完璧な専務が体調管理もできないと噂されては立場がない。
和生は誰にも気づかれないように、平然と呼吸を整えていた、はずだった。
「これ、どうぞ」
俯いていた和生の前に立ったのは、白いワークキャップにブラックのコックコートとパンツの愛菓だった。
彼女が差し出したのは、丸椅子とミネラルウォーター。
「いえ、私は仕事中ですので」
キッパリと断る和生を、愛菓は無理やり丸椅子に座らせて顔を寄せると
「大丈夫、私が上手く誤魔化すので任せてください」
と耳元で囁いた。
耳にかかる吐息が温かくて、ゾクッとした。