欠けてるあなたが大好きです。
半分ほどナポリタンを食べて気づいた。
目の前の諒くんが一切食べてないことに。
「諒くん食べないの?冷めちゃうよ?」
「…咲雪は、なんとも思わねぇの?」
「何を…?」
「感情がないなんて、きもいだろ…?」
精気のない表情の諒くん。
つづるさん達はわたしの返答が気になるのか、
みんな静か。
すーっはーーっと深呼吸をしてから口を開く。
「感情の有無って、そんなに大事かな…?」
ガタッと音を立てて立ち上がるカヅキさん。
つづるさんが制してくれてるのを見て、言葉を続ける。
「確かに、感謝の気持ち…あったかい気持ちを
込めて言ったありがとうと、
何にも思ってなくても
あたかもそう思ってますって感じの
ありがとうは違うかもしれない。」
ゆっくりゆっくり言葉を紡ぐ。
「でも、その込める気持ちの量だって人それぞれ。
わたしの100の感謝だって、
お母さんからしたら20にも満たないかもしれない。
でもそれは、何にもおかしくない、普通のこと。」
お母さんのありがとうは、
言われるとすごく胸があったかくなる。
わたしよりも
もっとずっと感謝の気持ちを込めて
言っているに違いない。
言われる度にそう思う。
「それに、感情って、自分の言動を決める
1つの基準みたいなものなだけだと思う。
感情以外にも言動を決める要素は
たくさんあるはず…。
わたしは感情がないからって、
その人にしてもらったことが
全部嘘だとは思えない。」
まっすぐ、諒くんの瞳を見る。
「だから、諒くんが
楽しそうにバスケしてたのも、
諒くんがおばけ屋敷で
わたしの手をひいてくれたのも、
実行委員一緒にやってくれるのも、
全部全部諒くんとの大事な思い出。
諒くんがわたしを助けてくれる時
無感情だったとしても、
わたしはすごく嬉しかったし助かったんだよ。」
「咲雪…。」
かぁぁぁあっと顔が赤くなっているのを感じる。
なんかわたしめっちゃしゃべった…!?
こんなに意見言ったの、
人生で初めてかもしれない…。
ちらっと周りを見ると、
つづるさんと彩陽さんがにやにやしていた。
「ありがとな。」
一言つぶやく諒くん。
感情がなくたって、諒くんは諒くんだもん。
ミートソースパスタを食べ始めた諒くんに
元気を出してほしくて、いじわるしてみる。
「今のはどれくらいの感謝の気持ち込めたー?」
「何?けんかうってんの?」
そう返事をしてくれる諒は
普段みたいに口角を上げてくれてて。
よかった…!
わたしには何にもできないと思ってたけど、
少しは力になれたかな。
胸があたたかくなって、自然と頬がほころぶ。
この当たり前の嬉しいって感情も、
大切にしなきゃな。
そんなことを思ってると…。