同じ人を好きになるなんて
私はその場から動けなくなり顔だけを彼に向けた。

開いた口が塞がらないとはこういうことなのだとしったのもこの時だった。

だって会話らしい会話も今日が初めてなのに好きだという彼の感覚がおかしいと感じたからだ。

「何かの罰ゲームですか?」

「え?」

「それともイケメンがパッとしない女子に告白したらどんな反応が返ってくるかってゲームですか?」

「な、何言ってるんだ。俺は––」

何かを言おうとしている彼の言葉を遮るように私の口は止まらない。

「まともに会話もしたことのない私に好きだっていることがありえないんです。そもそも私のどこがいいんですか?」

綱島先輩は力強い目で私を見た。

「美味しそうにご飯を食べている時の姿に一目惚れ?」

男性から告白されたこと自体人生初の出来事だったが、まさかその理由が私の食べている姿?
しかも一目惚れ?
それこそが怪しい。いや、こじつけ?理解不能?

そもそも私は一目惚れなんてものは信じない。

しかも食べてる姿?ますます怪しい。

「嘘つくならもっとマシな言い方ってものがあるんじゃ––」

「嘘じゃない!」

語気を荒げながら綱島先輩が勢いよく立ち上がった。

初めて聞く強い口調にたじろいだ。
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