同じ人を好きになるなんて
トイレをすませたりっくんだが、陸斗の存在には気付かず寝ぼけた様子で階段の手すりに手をかけた。

「私、部屋まで連れて行きます。食器は後で片付けるのでそのままにしてて」

私はりっくんを寝かしつけると、しばらく寝顔を眺めていた。

陸斗にとてもよく似た可愛い男の子。

どんな理由で母親がいなくなったのかはわからないけど、この子に母親が必要なのは一緒にいる時間が長くなるに連れよくわかってきた。

でも私でいいの?

私は単なる家政婦で陸斗の元カノ。

割り切ってしまえばいいのにそれを拒む理由は何?

陸斗のことを知りすぎているから?

付き合っていた頃の優しくて、包容力があって、どんなことも褒めてくれて……

そんな彼の良さを知っているから私は怖いのかもしれない。

また同じ人を好きなってしまうかもしれない怖さを……

なんで再会しちゃったんだろう。

私は心の中で大きくため息を吐くとゆっくりと立ちがった。
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