エリート外科医といいなり婚前同居
この人には、確かに家政婦が必要そうだけど……挨拶もまともにできない人に雇われるのは、なんとなく嫌だな……。
「あのう、暁さん」
「はい」
私の呼びかけに返事をしながらも、キーボードを打つ彼の手は止まらない。
私はムッとしそうになるのを堪えつつ、仕事の話を進めなくてはと言葉を続けた。
「早速ですが、契約のお話をしたいんです。父からは、ざっくりしたことしか聞かされていないので」
「父? ……というと?」
あらかじめ父から電話で話は聞いているはずなのに、まるで心当たりがなさそうな彼の口ぶりに、さらに腹が立った。
きっと父と電話していた時も、こんなふうに片手間だったんじゃないだろうか。だからイマイチ話が飲み込めていないんだ。……なんて失礼な人なの。
「父は紺野博史! 私、その娘の千波です!」
憤然たる口調で私が言い放った瞬間だった。突然暁さんがこちらを振り向き、私の顔をまじまじと見つめてきた。
わ。予想以上に容姿端麗な人……。
緩くウエーブがかった、黒髪のミディアムヘア。横に流した前髪からのぞく双眸は、吸い込まれそうな深い漆黒。スッと通った鼻筋に、少し不機嫌そうに尖った唇。
それらが黄金比と言った感じに配置されている暁さんの顔は、確かにイケメンそのものだ。