エリート外科医といいなり婚前同居

「あの! 靴の置き場がないんですけど!」

どこにいるかは知らないけれど、部屋の主に向かってそう声をかける。

しかし彼は姿を見せてくれることなく、奥に見える扉の向こうから飛んできたのは「適当に置いといて」という、さも面倒くさそうな声だけ。

適当にって……それができないから困ってるんでしょうよ! 出てきてくれないなら勝手にやりますからね!

よく見れば、玄関には立派なシューズクロークが備え付けてある。

私は散乱する靴のいくつかをササっとそこにしまい自分のスペースを確保すると、履いてきたプレーンなパンプスを脱いで隅に揃えた。

これはもしかして、部屋の方もかなりの散らかりようなんじゃ……?

不吉な予感を抱きつつ廊下を進み、リビングと思しき突きあたりのドアに恐る恐る手をかけ中を覗く。すると、抱いていた予感は、やはり的中していた。

本来なら広々と開放感溢れているのであろう、二十畳余りのリビングダイニング。そこは、山のように積みあげられた書類や医学書に埋め尽くされ、まったく寛げそうになかった。

唯一スペースの空いているのはソファとテーブルの周辺だけで、暁さんは私に背を向けたまま、そこでパソコンを打っている。


< 9 / 233 >

この作品をシェア

pagetop