エリート外科医といいなり婚前同居
「あの! 靴の置き場がないんですけど!」
どこにいるかは知らないけれど、部屋の主に向かってそう声をかける。
しかし彼は姿を見せてくれることなく、奥に見える扉の向こうから飛んできたのは「適当に置いといて」という、さも面倒くさそうな声だけ。
適当にって……それができないから困ってるんでしょうよ! 出てきてくれないなら勝手にやりますからね!
よく見れば、玄関には立派なシューズクロークが備え付けてある。
私は散乱する靴のいくつかをササっとそこにしまい自分のスペースを確保すると、履いてきたプレーンなパンプスを脱いで隅に揃えた。
これはもしかして、部屋の方もかなりの散らかりようなんじゃ……?
不吉な予感を抱きつつ廊下を進み、リビングと思しき突きあたりのドアに恐る恐る手をかけ中を覗く。すると、抱いていた予感は、やはり的中していた。
本来なら広々と開放感溢れているのであろう、二十畳余りのリビングダイニング。そこは、山のように積みあげられた書類や医学書に埋め尽くされ、まったく寛げそうになかった。
唯一スペースの空いているのはソファとテーブルの周辺だけで、暁さんは私に背を向けたまま、そこでパソコンを打っている。