エリート外科医といいなり婚前同居

内心ショックを受けつつ拓斗くんを見つめ返すと、彼は思いもよらないことを言う。

「そうだ。僕に選ばせてくださいよ、千波さんのドレス」

「拓斗くんに……? でも、なにか予定があるんじゃないの?」

「いえ、ただこの辺をフラフラしてただけで、時間ならあるから大丈夫です」

爽やかな笑顔で断言されると、こちらも拒否しづらい。

男の人とはいえ、拓斗くんの若いセンスを信じて協力してもらう?
……あ、でも。

その時私の脳裏に蘇ったのは、以前礼央さんに言われた言葉だった。

『俺の個人的な感情としては……男とふたりきりで出かけられるのは、嫌かな』

あれは、嫉妬心だったのだろうか。

でも、礼央さんが私を想ってる可能性は低いはずで……なのに、婚約者のフリして甘い言葉やキスは毎日のように交わしてて……ああもう、私たちの関係って、わけがわからないよ。

「千波さん?」

拓斗くんに呼びかけられ、ハッと我に返る。

ええと、拓斗くんにドレス選びを付き合ってもらうかどうか、だったよね。

それくらいで礼央さんが傷つくとは思わないけど……なんとなく、自分が気になっちゃうから……。


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