エリート外科医といいなり婚前同居
「ごめん、拓斗くん。私、男の人とふたりで買い物するのとか、ダメなんだった」
「……あ、すみません! そっか、彼氏さんが怒りますよね」
雰囲気を察したらしい拓斗くんがそう言って謝るけれど、彼氏ではないんだよなぁ……と内心モヤモヤする。
もちろん、それをわざわざ拓斗くんに説明する必要はないから、特に否定せず黙って苦笑する。すると、拓斗くんが俯きがちにぽつりと呟いた。
「千波さん、彼氏いるんだ……」
え……なんでそんなショック受けたみたいな反応……?
不思議に思っていると、顔を上げた拓斗くんはなぜかにっこり微笑んでいて。
「でも、僕たち姉弟なんだから、問題なくないですか?」
「姉弟って……」
確かにそうなる予定ではあるけど、なったとしても義理で、血のつながりはないよ?
混乱する私に構わず、彼は笑顔のまま続ける。
「彼氏さんに怒られたら、僕も一緒に説明しますから。じゃ、行きましょう」
そんな言葉とともに断りもなく手を繋がれ、私は内心パニックになる。
「ちょ、ちょっと、待ってよ拓斗くん!」
やっぱりこの子、強引……! そしてなんなのよこの手は!
まったくわけがわからないまま、私は彼とともにショッピングをすることになってしまった。
彼は姉弟と言い張るけれど、私たち会うのこれでまだ二度目だし、そんなに親しくないのに……。