エリート外科医といいなり婚前同居
礼央さんも驚いたように目を見開き、一瞬固まった後、店に入ってきた。
「千波。偶然だな、買い物?」
「礼央さんこそ……会食だったんじゃ」
「ああ、ここの最上階に入ってる懐石料理の店にこれから――」
彼がそう言いかけたのと同時に、店の奥から新たなドレスを手にした拓斗くんが戻ってきて。
「千波さん、今度こそきっと似合いますよ、このドレス……って」
その声に振り向いた礼央さんと拓斗くんが、お互い怪訝そうにしながらぺこりと会釈し合う。
そっか、私が紹介しなきゃだよね……。
「礼央さん、あの、こちらは前に話した、父の再婚相手の方の息子さんです」
「……そうか、きみが」
「白石です、どうも」
ぎこちない挨拶を交わすふたりを見ながら、今度は拓斗くんに礼央さんを紹介しようと私は口を開く。
「そして、こちらは私を家政婦として雇ってくださっている、暁さ――」
「違うだろ、千波」
私の言葉に被せて、礼央さんが言う。口元には微笑を浮かべているけれど、目が笑っていない彼に、なんとなく胸がざわついた。