エリート外科医といいなり婚前同居

礼央さん、なんでぴりぴりしているのだろう。
それに〝違う〟って、なにがですか……?

私が考えている間に、礼央さんは拓斗くんに向き直って自ら自己紹介をした。

「彼女の婚約者の暁です。いつも千波がお世話になっています」

「……婚約者? ああ、ということはあなたが例の束縛彼氏ですか。彼女に聞きました。男性と二人でただ出かけることすら怒られると」

なぜだか挑発的に礼央さんを見据えてそんなことを言う拓斗くんに、礼央さんの眉がぴくりと動いて、ふたりは無言で睨み合った。

な、なんなのこの居たたまれない空気は……。というか、束縛彼氏だなんて私言ってないんだけど……!

ハラハラしながら二人の顔を交互に見比べていると、礼央さんがふっと息をこぼし、それから余裕の笑みを浮かべた。

「ええ、そうなんですよ。彼女を愛しすぎるが故、少々嫉妬深くなってしまうところがありまして。……しかし、これは俺たちの問題です。部外者にとやかく言われる筋合いはありません」

途中から笑みを消した礼央さんが、威嚇するように強い眼差しを拓斗くんに向ける。

どうして礼央さんはこんなに怒っているの……?
彼の言うように、嫉妬……なの?
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