エリート外科医といいなり婚前同居


「会食は、キャンセルした」

「は、はい……。聞いてました……」

いつもより抑揚のないハスキーボイスが少しだけ怖くて、怯えたように身を固くしながら返事をする。

すると、礼央さんの表情が次第に緩んで、苦笑しながら私の頭にポンと手を置いた。

「そんなに怖がるなよ。別に、千波に対して怒ってるわけじゃない。彼には、偶然会ったとかそんなところだろう?」

よかった、礼央さんに誤解されたわけじゃなかった。……って、なんでそんなことでホッとしてるんだろう。

礼央さんと気まずくなりたくないから……?

自分の気持ちに不可解なものを感じながらも、私は気を取り直して状況を説明し始める。

「はい。買い物中に偶然会って、ドレスを探してるって話したら、拓斗くんがなぜか自分が選びたいって言い出して……」

「で、選んでもらったの?」

「いえ、彼のおすすめは私に似合いそうもないものばかりで……」

ああいうのが拓斗くんの趣味なのかもしれないけど、私が着たいドレスは……。

そこまで考えたところで、自然と瞳が礼央さんの方を向いた。


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