エリート外科医といいなり婚前同居
「よく来たね、暁くん」
「こんばんは、田所先生。この度はお招きありがとうございます」
入り口のそばでさっそく礼央さんに声をかけてきたのは、よく日に焼けた五十代くらいの男性。
会話の内容から察するに、礼央さんにお見合いをすすめたこの家の主人のようだ。
「もしかして、そちらのお嬢さんが?」
「ええ。婚約者の千波です」
田所さんの質問に答える形で、礼央さんが私を紹介する。嘘をついているなんて微塵も感じさせない、自然な振る舞いが頼もしい。
そんな彼に対し、どうしてもぎこちない態度になってしまう私が「初めまして」と慌てて頭を下げると、田所さんは礼央さんにからかいの視線を向ける。
「なるほど、見合いを断るわけだ。こんな可愛いお嬢さんを仕留めていたとは」
「先生のご厚意を無駄にしてしまって申し訳ありません。でも、結婚相手には彼女以外考えられなくて」
嘘のセリフだとわかっていても、ドキンと胸が鳴った。
これが彼の本心だったらいいのに……。そう願わずにいられない。