エリート外科医といいなり婚前同居
「ありがとう……ございます」
なんだか照れくさくて、お礼は目を見て言えなかった。
でも、これから住み込みで働くんだから、これくらい慣れとかなきゃダメだよね。
一度引き受けると決めた仕事を投げ出したくはないし、何より私は仕事を選べる立場ではないのだ。変な雑念に惑わされず、やるべきことをやらなくちゃ。
私は気を引き締め直して暁さんと明日の約束を交わし、互いの連絡先交換を済ませると、彼のマンションをあとにした。
*
夕方五時過ぎに自宅に戻ると、すでに今日の診療を終えたらしい父の靴が玄関に置いてあった。
しかし、その隣に見慣れない女性用のスニーカーが並んでいるのが目に入り、お客さんだろうかと首を傾げながら中へ進み、リビングのドアを開けた瞬間だった。
「結婚してくれ」
父がそんな衝撃発言をするのが聞こえて、私は開きかけていたドアをとっさに閉めてしまった。
えっ。嘘。今、お父さん、なんて……? それに、相手の人は誰……?
途端に心臓がばくばく鳴り始め、私は若干の罪悪感を覚えつつも、ドアの外で聞き耳を立てた。