エリート外科医といいなり婚前同居
礼央さんは意表をつかれたように目を見開いて固まり、それから苦笑を浮かべる。
「千波がそんなこと聞いてくるなんて意外だな。友達か誰かになにか言われた?」
「はぐらかさないでください、私、真剣に聞いてるんです!」
ムキになって声を荒げる私に、礼央さんは「ごめん」と謝る。それから正面を向いてなにか考え始め黙り込んでしまった彼に、私はさらに質問を重ねる。
「私に魅力がないからですか?」
「……違うよ」
「私に経験がないから?」
「それも違う」
「じゃあ……私のこと、本気じゃないから?」
泣かないでいようと決めていたのに、その最も悲しい選択肢を口にすると、視界がぼやけて揺らめいた。
その情けない表情で礼央さんを見つめると、彼は怪訝そうにしながら私の肩に両手を置いた。
「落ち着けよ、千波。どうしてそんなこと聞くんだ。なにがあった」
「そんなのどうだっていいじゃないですか……!」
彼の手を払いのけ、悲痛に叫ぶ。
私はただ礼央さんの気持ちが知りたいだけ。由貴さんの言っていたことは嘘だって、あなたに証明してほしいだけなの……。
「お願いだから聞かせてください。……私を抱かない理由。教えてくれないなら出て行きますから私。……同居は解消です」