エリート外科医といいなり婚前同居

その言葉を聞いた礼央さんは、急に目の色を変えて私の手首をつかみ、無理やりソファに押し倒した。

「……出て行くなんて、許さない」

彼は珍しく余裕のない表情で、低く呟く。掴まれた手首が痛い。

その時脳裏に蘇ったのは、由貴さんの冷めた声。

『便利な家政婦であるあなたを手放したくない彼は、慌ててあなたを抱こうとするでしょう』

ああ……まるで彼女の話していた展開通り。

そんなに私は便利な家政婦だった? こんなに乱暴に引き留めなくても、あなたなら代わりになるような女性がいくらでも手に入るんじゃないの? 

胸の内で語り掛けながら、揺らめく視界の向こうにいる彼を、ジッと見つめる。

すると礼央さんは、なぜか私の体の上から退き「ちょっと待ってて」と言い残し、部屋を出て行ってしまう。

いったいどこへ……。鼻を啜りながら上半身を起こし、リビングのドアを見つめる。

彼は一分もしないうちに戻ってきたけれど、その手に見覚えのあるピンク色の物体があるのに気づいて、私は胸騒ぎを覚えた。

あれは確か、彼がベッドの下に隠していた……。ねえ、今からそれでなにをするつもり?




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