エリート外科医といいなり婚前同居
これからどうしよう……って、帰る場所なんて実家しかないよね。
お父さんになんて説明すればいいんだろう。時期的に〝年末年始は家族と過ごそうと思って〟って言えば、納得してもらえるかな。
鉛のように思い気持ちを抱えたまま電車に乗り、実家の最寄り駅で降りる。
そしてもう少しで家だという所で、私は歩道の段差につまずいて派手に転んだ。
「いったぁ~……」
ダメだ。今日はとことんついてない……。
ため息をつきながら痛む膝を確認すると、穿いていた黒のタイツが伝線し、派手な擦り傷ができていた。
心が弱っているので、ただそれだけのことで子どもみたいに泣きたくなってしまう。
「うう……痛いよぉ」
踏んだり蹴ったりの状況が切なすぎて、半泣きでトボトボ歩いていたその時だった。
「千波さん?」
後ろから聞き覚えのある声がして、恨めしげに振り向く。そこにはイヤフォンを耳から外して驚いた顔をする拓斗くんがいて、何気なく視線を落とした彼が私のケガに気づき、慌てて駆け寄ってきた。