エリート外科医といいなり婚前同居
「紺野先生ならいませんよ。今日から元日まで、うちの母と温泉行ってるんで」
「えっ!?」
お父さんいないんだ……それは想定外だったな。でも、家に誰もいないならかえって好都合かも。あれこれ詮索されなくて済むし。
「そ、そうだったんだ。連絡しないで来ちゃったから知らなかったよ。じゃあ大みそかはひとりで紅白かなぁ」
あはは、とひとりで乾いた笑いをこぼしていると、拓斗くんは真面目な顔でさらにとんでもない事実を明かした。
「ひとりじゃないですよ。僕がいるんで」
「え……? 拓斗くんがなんでうちに……?」
「僕、前に千波さんのお母さんの亡くなった理由について話しましたよね。その時千波さん、怒ったり責めたりすることなく、結婚に尻込みしてるうちの母の背中を押すようなこと言ってくれたじゃないですか。それを母に伝えたらようやく吹っ切れたみたいで、今結婚に向けて色々動き出してて」
なぜだろう。とてつもなく不吉な予感がする。結婚に向けて色々動き出してるという流れの中で、拓斗くんが我が家にいる理由ってもしかして……。
「つい最近、母と住んでたアパートは引き払って紺野先生の家に住むことになったんです。ふたりとも仕事が忙しいし、その方が色々便利だろうって」
「そ、そうだったんだ……」