エリート外科医といいなり婚前同居
『雅子……まだか?』
『ちょっと待って聖人さん、千波がなにか困ってるみたいで』
『俺も困ってるんだけど。中途半端におあずけされて』
『少し待っててくださいってば……や、まだ、電話中……』
雅子の甘い声とともに布が擦れる音がして、私はかぁぁっと恥ずかしくなる。
これは……もしかして私、お取り込み中に電話しちゃった!?
「もしもし雅子、私の方はやっぱり大丈夫だから! ごめんね邪魔して! おふたりともよいお年を!」
一方的に捲し立てて電話を切り、はぁっと息をついた。
すると隣で一部始終を見ていた拓斗くんが、私の表情を窺いながら言った。
「ずっとここにいたら寒いし、とりあえず家に帰りませんか? 僕のこと警戒してるのかもしれないけど……いくらなんでも、今の弱ってる千波さんを取って食ったりはしません」
「拓斗くん……」
私が弱ってるの、察してたんだ……。
そうだよね、いつまでもこんな真冬の公園にいたら、風邪をひくどころか凍死しちゃう。今の拓斗くんからは危険な雰囲気は感じられないし……信じても大丈夫そうかな。
「わかった。帰ろっか」
「はい。あ、途中のコンビニでおでんでも買って行きません?」
「いいね、おでん! あとビールも」
「あはは、千波さん飲んだくれる気だ」