エリート外科医といいなり婚前同居
「千波ちゃん……もしかして、さっきの、聞いていたの?」
「ごめんなさい。偶然聞こえちゃって、なかなか部屋に入りづらくて……。でも、本心です。お父さんには幸せになってほしいって、ずっと思ってたから」
「そう……」
……あれ? 私、白石さんを安心させてあげたくて言ったのに、あまり嬉しそうじゃない?
微妙な笑みで黙り込んでしまう彼女を見て、かすかな違和感を覚える。
そのうち、父が私たちのもとにやってきて、白石さんに向けて優しく諭すように言った。
「ゆっくり悩んでくれていい。悩んだ末、やっぱり無理だって思ったら、断ってくれてもいい。俺は、きみを苦しめたいわけじゃないんだ」
「博史さん……」
白石さんは瞳を潤ませ、それを隠すようにぺこりと一度頭を下げると、私たちに背を向けて玄関を出て行った。
彼女の姿がドアの向こうに消え父と二人きりになると、私は思わず父を肘でつついて冷やかした。
「カッコいい~」
「親をからかうなっつーの。……でも、ありがとな千波。お前が俺のことあんなふうに思ってくれてるとは知らなかった」
そんな言葉とともに、子どもの頃のようにぽんぽん大きな手で頭を撫でられ、今度はこっちが照れくさくなる番だった。
そういえばさっき、本人がいる前で結構恥ずかしいセリフを言ってしまったっけ……。