エリート外科医といいなり婚前同居

そうして同居生活で彼女のいろんな顔を知るうちに、再会した日に芽生えた淡い気持ちはみるみる本気の恋心になった。

しかしだからこそ俺は彼女にあの約束を思い出してほしくて、意地になってしまった。

そう、意地だ……くだらない意地。

俺は千波が出て行く直前、なにを思っていたのかなんて考えてもいなかったんじゃないか?

クリスマスパーティーの頃からずっと、千波はなにかに追い詰められていた。

そんな彼女に気が付いていたのに寄り添ってやろうとせず、ただ自分の思いだけぶつけて……拒否されて、ひとりよがりに傷ついて。

「……なにをしているんだ俺は」

自分を責めながら、髪をくしゃりと掴む。仕事のことならどんなトラブルにも冷静に対処でいるのに、千波のこととなると感情が昂ってまるでダメになる。

はぁ、と大きなため息をつき、水でも飲んで落ち着こうとキッチンに向かった。

ミネラルウォーターを取り出すために冷蔵庫を開けてみると、ふとタッパーに入ったおかずが目に入る。

手に取ってふたを開けてみと、中にはデミグラスソースたっぷりの煮込みハンバーグが。

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