エリート外科医といいなり婚前同居
あの時交換条件に受け取った紅茶は確かに橋本に似合わない品ではあったが、そうまでして俺と千波の生活ぶりを冷やかしたいのかと特に気に留めていなかった。
でも、橋本の後ろにもう一人別の人物がいたのなら、確かにそっちの方が納得できるかもしれない。……しかし。
「誰だよ、ある人って」
俺のマンションの場所を知って得をするような人物なんて、思いつかないが。
怪訝そうな俺の声に答えたのは、橋本とは別の女性の声。
「私よ」
どこからともなく現れたのは同僚の内科医、中村由貴だった。
「中村……」
彼女は腕組みをしながら颯爽と俺たちに歩み寄り、長い髪をうっとうしげにかき上げると信じられない事実を口にした。
「昨日、彼に教えてもらったあなたのマンションに行って、千波さんと話してきたの」
「……千波と?」
そんなこと、彼女はひと言も言っていなかったのに……。ゆうべ千波の様子が変だったのは、そのせいなのか?
「ええ。暁先生がいつまでもこっちを向いてくれないからもう我慢できなくて、色々言わせてもらったわ。でも、目に涙を溜めて精一杯純愛ぶる彼女に余計に腹が立った。暁先生、あんな世間も男も知らない小娘のどこがいいわけ? どこからどう見ても、あなたレベルの男が付き合う相手じゃないわよ」